[イ・ヒョヌのMLB+] "野球革命家"大谷翔平
SPOTVニュース

※一部要約
前人未到。
"前の人がまだ踏んでいない"という意味で、ある者がこれまで誰も行くことのできなかった領域に到達したときに使われる四字熟語だ。
日本人の"投打兼業"野球選手の大谷翔平が歩んでいるところでもある。
大谷派5日、MLB事務局が発表した2021オールスター戦のアメリカンリーグ先発投手リストに名前を上げ、打者と投手のどちらでもオールスターに選ばれた。
1933年にMLBで最初のオールスター戦が行われた後、1人の選手が打者と投手のどちらでもオールスターに選ばれたのは初めての出来事である。
岩手県奥州市出身の大谷は社会人野球選手出身の父親とキャッチボールをして自然と野球に入門し、8歳のときに地元のリトルリーグに入ったのを皮切りに中学時代のシニアリーグを経て花巻東高校に進学した。
同地域出身で憧れの先輩であり、今年のALオールスターに一緒に選ばれた菊池雄星の出身高校だったためである。
高校1年から4番打者兼エースとして活躍した大谷は、3年のときに日本アマチュア野球史上初の160キロを記録して注目を浴びた。
だが甲子園で通算14.1イニング防御率3.77と打率0.333・1本塁打で、プロ進出を狙う高校選手としての表面的な成績はそれほど優れていると見るのは難しい"磨かれてない原石"に近かった。
だがそこには高校時代の恩師である佐々木洋監督の配慮が隠されていた。
大谷を初めて見た瞬間、日本野球界の宝物になると直感した彼は、日本の高校野球監督としては珍しくエース大谷の投球数を徹底的に管理した。
そのおかげで酷使を避けた大谷は、相対的に腕が新鮮な状態でプロの舞台に進出することができた。
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広く知られている通り、高校卒業時の大谷の目標は"メジャーリーグ直行"だった。
だが彼がアメリカに進出したときに指名権を失う状況でも、日本プロ野球の日本ハムファイターズは2013年の新人ドラフト1次指名選手に大谷を選択し、山田正雄団長を筆頭にした首脳陣の積極的な求愛の末に彼を居座らせることに成功した。
このとき大谷を説得するのに決定的な役割を果たしたのが、"2006年以降に韓国で高校卒業後にアメリカへ直行した選手のキャリア"と"2013シーズンを前にドジャースとポスティング費を含め約6年6200万ドルで契約したリュ・ヒョンジン"を比較した資料だった。
付け加えて、日本ハムは大谷を説得するのに今の彼を作った重要な条件をつけた。
"投打兼業をさせてあげること"だった。
別名二刀流と呼ばれる大谷の投打兼業については日本球界でも悲観論が多かった。
プロレベルで二種類を併行するのは運動メカニズムから見ても、体力的にも無謀な試みというものだった。
事実、大谷はこのような投打兼業に対する悲観論からプロ進出後8シーズンが経った今年はじめまで自由ではなかった。
ある分野で天才的な才能を発揮する者を眺めるときによくおかしやすい間違いは、最初から順調な道を歩んでいただろうと早合点することだ。
だが大谷が投打兼業を継続できた過程には数多くの危機があった。
デビュー初年度から大谷は打者と投手のどちらも満足できない成績をおさめ、"二つのうち一つを選ばなければならない"という非難を受けた。
2年目の2014シーズンに打者として二桁本塁打、投手として二桁勝利をおさめて期待を集めそうだったが、翌年の2015シーズンには打撃成績が振るわずに世論が再び懐疑的に背を向け、2016シーズンにパシフィック・リーグMVPを受賞して静まりそうだったが、ビッグリーグ進出を控えた2017シーズンには足首の負傷で再び大谷の投打兼業が俎上に載せられた。
このような状況はビッグリーグに進出してからも続いた。
2018年のAL新人賞に選ばれて華やかにスタートしたが、進出初年度だった2018シーズン中盤に肘の手術を受けて2019年は1試合も登板できず、2020年には2試合1.2イニングの投球に終わり、アメリカ進出後に大谷の投球イニングは去年までの3年間で53.1イニングに留まっていたからだ。
そのような一連の過程を通じて、今シーズン開幕前に大谷の投打兼業への視線は2013年以降のどのときよりも否定的に変わっていた。

そういう大谷にとって幸いな点があるなら、彼の所属チームがアメリカ進出時に投打兼業を積極的に保証したエンゼルスということだった。
一方、エンゼルスが強力な打線に比べて先発陣が弱いという点も、投打兼業を続けられるのに好材料として作用した。
だが何よりも重要な点は、悲観的な状況でも大谷自身が投打兼業への意志を手放さなかったことである。
昨冬に大谷は、光学追跡カメラやレーダー想定装備などの先端装備を活用し、選手のメカニズムを分析して効率的に改善する練習施設の<ドライブライン・ベースボール>を訪れて身についた悪い習慣を矯正した。
その結果、大谷は9日基準で打者として81試合で32本塁打69打点、打率0.279、OPS1.064、投手として4勝1敗67イニング、87奪三振、防御率3.49という漫画を越える活躍をしている。
特に32本塁打は共同2位のブラディミール・ゲレーロ・ジュニア、フェルナンド・タティス・ジュニアと4本差の全体本塁打1位であり、歴代のアジア出身打者として単一シーズン最多本塁打記録である。
もちろん今シーズンに打者として大谷より好成績を記録している選手や、投手として大谷より優れている選手がいないわけではない。
打率・打点・OPSで1位に上がっているゲレーロ・ジュニアと、ファストボール"平均"球速99.3マイル(約159.8キロ)に防御率1.08(1位)に上がっているジェイコブ・デグロムが代表的だ。
だが投打を総合したとき、大谷が現時点で最高の選手という事実を否定するのは難しい。
これについてボストン・レッドソックスの監督 アレックス・コーラは地元メディアとのインタビューで「大谷はMVP候補群にいなければならない。(そうでなければ)我々は新たな賞を作らなければならない。大谷は最高の打者でも最高の投手でもないが、すべてを合わせれば彼が最高の選手だ。率直に言って私は大谷がするすべてのことに畏敬の念を感じる」と語った。

そのような大谷に対する評価は、単に"象徴性"や"希少性"に限った話ではない。
実際、大谷はアメリカの野球統計サイト<ベースボール・レファレンス>のWAR(代替選手と比較した勝利貢献度)基準で打者としては3.7勝(7位)、投手としては1.9勝(43位)に留まっているが、投打を総合したときは5.6勝で2位のデグロム(5.0勝)と大差でML全体の1位に上がっている。
大谷はビッグリーグ進出後、4年で投打兼業という自分だけの方法で歴史を新たに作っている。
そして今シーズンの彼の活躍がさらに感動的な理由は、数多くの逆境と批判を乗り越えて立ち上がり、自ら掘り起こした成果だというところにある。
だがこれまでの負傷歴を考慮したとき、大谷が現在の活躍をいつまで続けられるかは依然として未知数だ。
果たして大谷はシーズン最後まで今のペースを維持し、投打兼業MVPという業績を達成することができるだろうか?
一つ確かな点は、現在までに見せた姿だけでも大谷はメジャーリーグレベルで投打兼業は不可能という偏見を破り、新たな地平を切り開いたということである。
イ・ヒョヌコラムニスト