[ソ・ホジョン] VARの学習効果、あるかないか
ソ・ホジョン コラム



※一部要約

後半30分。
ヴィッセル神戸がハーフライン付近で成功したプレスから始まった速いカウンターが、佐々木大樹のシュートで終わってスコアは0-1から0-2に広がった。
このとき蔚山現代は、主将シン・ジノをはじめとする選手が神戸のカウンターの起点になったプレーがファールだとアピールした。
バーレーン出身のナワフ・アブドラ・シュクララ主審がVAR室からの信号を受けた後、オンフィールドレビューに入った。

ファールが疑われた状況に対するスロー映像が出てくると、Kリーグをずっと見てきたファンならファールの宣言を直感しただろう。
プレスをかけた安井拓也がボールを奪う過程でシン・ジノの後ろ足を左足で蹴るシーンが出たからだ。
オンフィールドレビューの後、シュクララ主審は断固としてファールを宣言し、神戸の2点目は取り消された。

このシーンは蔚山の2020AFCチャンピオンズリーグ決勝進出で大きな分岐点となった。
試合後、ユン・ビッカラムは「あのゴールが取り消されて我々の士気が蘇ったのは事実だ。あのゴールが認められていれば2ゴールを追いつかなければならなかったのでもっと大変だっただろう」と当時の判定の重要性を説明した。

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6分後、蔚山はVARでもう一度運命が変わった。
ユン・ビッカラムがアーク正面から打ったミドルシュートがビヨン・ジョンソンの足をかすめて1-1の同点にした。
ところがオフサイドを伝える第1副審の旗が上がった。
ジョンソンは指を揺らし、決してオフサイドではないと強調した。
もう一度VARのチェックに入り、蔚山の攻撃展開の過程とジョンソンの足をかすめたシーンのどこにもオフサイドがないことを確認した主審が得点を認めた。

延長後半12分のシーンは先の2回の決定的シーンとは違った。
ペナルティボックス内で神戸GK前川黛也がボールをしっかりキャッチできなかったため、ジュニオが諦めずに追った。
ジュニオより半テンポ遅かった前川は体を使って阻止し、ファールをおかしてしまった。
シュクララ主審は今度はVARの助けも受けず、確信に満ちたPK宣言をした。
キッカーとして出たジュニオが落ち着いて逆転ゴールを成功させて蔚山は2-1で勝利、2012年以来8年ぶりの決勝進出に成功した。

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試合後、AFC公式アカウントや日本現地のウェブサイト、コミュニティには不公正判定と誤審を越えて、八百長という主張まで充満した。
3回の決定的瞬間、そのうち2回のVARに納得できないという雰囲気だ。
神戸のクラブオーナーである楽天の三木谷浩史会長まで「判定に疑問が残る」とAFCに抗議するというニュアンスを見せた。
敗北した心情を考慮しても、不服に近い反応が続いた。
むしろ神戸としては、先制ゴールの後に迎えた追加得点のチャンスを、外国人FWドウグラスをはじめとする選手の判断ミスで飛ばしたことに敗因を見つけるべきだった。

VARに対するグラウンド内の選手、そして中継を見守ったファンの反応に表れる温度差は、学習効果の有無も大きい。
Kリーグは全世界でVARを最も早い時点で導入して安着させたリーグである。
2017年の後半期からKリーグ1に導入し、2018年からはKリーグ2まで導入した。
VAR導入3年目を迎える今年は、判定についての事後ブリーフィングが公開された。
依然として判定への不信はあるが、今回のAFCチャンピオンズリーグで出た全体的な判定レベルはKリーグを下回るという評価が出ていて、信頼度も逆転している格好だ。

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一方、JリーグはVAR導入をずっと先送りしている。
2018年からマニュアルを準備し、去年に示範の次元で14試合にVARを導入して行ったが、全体の導入は今年も失敗に終わった。
コロナ19による危険性やVAR室運営のための審判陣追加などの問題にぶつかり、Kリーグと比較すると特有の計画性と徹底性が世界的な流れを追うことを邪魔してしまったのである。
Kリーグはむしろコロナの危険性を徹底した防疫と消毒で正面突破し、判定の公平性を継続する努力をした。

VARの学習効果はグラウンドの選手、コーチングスタッフだけの問題ではない。
試合を見守るファンが作る世論形成の反応にも影響を及ぼす。
今回のチャンピオンズリーグでは8強からVARが適用されているが、国内ファンはかつて溢れていた判定の問題について「なぜVARをグループリーグから導入しないのか?」と反応した反面、日本のファンはVARを見ても誤審を主張している格好だ。

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国際サッカー評議会(IFAB)は「VARは依然として掴み出せないファールがあるが、VAR導入後に誤審は80%減少したのは明らか」という立場で、ビデオ判読システムを支持した。
そのような大勢にそっぽを向いている日本サッカー界の"あるかないか"式のVARに対する曖昧な立場は、両国サッカーの悲喜を分けたAFCチャンピオンズリーグ4強戦でより克明にあらわれた。


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