"闇の中でもサッカー"星になったレスター
蹴球ジャーナル

※一部要約
2013年12月27日、英国レスターにあるキングパワースタジアム。
当時イングランド・チャンピオンシップ(2部リーグ)所属だったレスター・シティはホーム球場でレディングFCを相手にしていた。
試合途中に停電が起き、主審は試合を中断させた。
するとレスターのホームファンは携帯電話のフラッシュを放って、即興的に応援歌を作って歌った。
「私たちはレスター・シティ、私たちは闇の中でも試合をするのだ(We‘re Leicester City,We’ll play in the dark)」
それから864日が流れた。
8日明け方、キングパワースタジアムでは「チャンピオン」が鳴り響いた。
レスターの2015-2016シーズンのイングランド・プレミアリーグ優勝を祝福するファンの歌だった。
首位レスターは5日前、2位トッテナムの引き分けによって残り試合の結果に関係なく優勝を確定させた。
1884年に創立したレスターは132年の活動で初めての1部リーグ優勝だった。
この日のエバートン戦はレスターのシーズン最後のホーム試合でもあった。
選手は最後までファンを感動させた。
レスターは3回の祝砲を放って3-1の勝利を抱かせた。
試合終了後、選手団はファンの拍手の中で優勝トロフィーを持ち上げた。
"チャンピオンソング"が再びキングパワースタジアムのあちこちに染み渡った。
3年前のファンの応援歌はレスター優勝の"メタファー"になった。
彼らは"闇"の中でもサッカーを諦めなかったし、ついに自ら星となって周囲を明るく照らした。
非主流が起こした"確率1/5000"の奇跡だった。
5000分の1はシーズン前に現地ブックメーカーが設定したレスターの優勝確率である。

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ラニエリ監督は今シーズンにレスターに就任する前までイングランド、イタリア、フランスなど各国リーグで様々なチームを指揮してきたが、1部リーグの優勝キャリアは一度もなかった。
レスターの前に引き受けていたギリシャ代表では、成績不振により3ヶ月で更迭された。
モウリーニョ前チェルシー監督から"失敗者(Loser)"と呼ばれる侮辱を受けたりもした。
それでも65歳の監督は自分だけのスタイルを守った。
レスター就任後も特有の温和なリーダーシップでチームを導いた。
シーズン中の短い休暇で、優勝の負担感に押し潰されそうだった選手にエネルギーを吹き込んだりもした。
また、最近まで「たとえ優勝できなくても私たちはすでにすごい成果を上げた」と選手の労苦を称えた。
そしてついに自身の指導者キャリアに"1部リーグ優勝"を刻みこんだ。
ラニエリ監督は「優勝は想像できなかった」と喜んだ。
モウリーニョ前監督も「昨シーズンに私がチェルシーで成し遂げた優勝を、今シーズンラニエリ監督に奪われた。彼の魔法のようなキャリアに私が含まれて光栄」として、"ウィナー(Winner)"であることを認めた。
ラニエリ監督は「レスターの選手とともにした優勝なのでさらに特別だ」と言った。
レスターにはスタープレーヤーがいない。
いわゆる"ビッグクラブ"のメンバーと比較して、ネームバリューの落ちる選手と"失敗した有望株"が集まったチームである。

それぞれフランス4部リーグと2部リーグ出身であるマーレズとカンテ、マンチェスター・ユナイテッドで席を掴めずにレンタルで転々としていたドリンクウォーター、マンチェスター・シティで光を見られなかったシュマイケルなどが今シーズン、レスターの各ポジションで大活躍した。
その中でも最も劇的な"人生逆転"の主人公はヴァーディだ。
彼は8部リーグでプレーしていて、生計維持のためにレンガ工場で労働者として働いていたアマチュア選手だった。
プロ選手の夢を諦めなかったヴァーディは、毎シーズン一歩一歩高い舞台に上がっていった。
2012年にチャンピオンシップのレスターのユニフォームを着た後、2014年にチーム昇格とともにEPLの舞台を踏んだ。
ヴァーディは今シーズン、11試合連続ゴールの新記録を打ち立てるなど、24ゴール(6アシスト)を放って大活躍した。
ヴァーディはこの日のエバートン戦でも2ゴールを放ち、得点首位のケインを1ゴール差で追撃した。
所属チームの同僚ドリンクウォーターとともにイングランド代表にも名前を上げたヴァーディは、3月27日のドイツ戦でAマッチデビューゴールまで放った。
監督と選手、そしてファンまで。
闇の中でサッカーを守った"レスター童話"は世界中のサッカーファンを感動させた。